少年サッカーを指導していると、試合中にこんな場面によく遭遇します。
「あぁ〜、逆サイド空いてるのにもったいない!」
「あそこで展開できてたらチャンスになったのに!」
目の前の密集エリアでボールを奪われる一方、逆サイドはぽっかりと空いている――。
指導者としては「そこに展開してくれたら…!」とつい叫びたくなる瞬間です。
しかし、そもそも子どもたちはなぜ逆サイドを使えないのでしょうか?
今回は、その原因と改善のためのアプローチを紹介します。
理由① ロングボールの技術的ハードルが高い
ある指導者の方は、こう語ってくれました。
「これは、ロングボールを蹴るのが容易ではないという可能性があると思っています。だから選択肢から外れがちですね。」
まさにその通りで、少年年代においてはそもそも技術的に“逆サイドに正確なロングボール”を蹴るのが難しいという現実があります。
片足で10〜20m程度のパスは出せても、逆サイドへスピードのあるボールを正確に送るには、以下のスキルが必要です。
- ミート力(芯を蹴る)
- 方向性(体の向きと軸)
- 浮き球のコントロール
この技術を持たないうちは、「空いてるけど蹴れない」「狙いたいけど怖い」といった心理が先立ちます。
つまり、選択肢として存在しないのです。
理由② 意思疎通が不足している
逆サイドへの展開には、実は味方との信頼と理解が不可欠です。
「逆サイドへの展開って、味方との意思疎通が必要なんです。相手がそこにいてくれる、という確信がないと出せないですよね。」
ピッチを斜めに横断するパスは、受け手にとっても準備とタイミングが重要です。
子ども同士の試合では、ポジショニングが流動的になりがちで、「あれ?もういないじゃん!」ということもしばしば。
そのため、逆サイド展開は「読まれてない」だけでなく、「信じられてない」ケースも多くあります。
理由③ 周りを見る“俯瞰力”が足りない
そして最後に、根本的な課題があります。
「俯瞰してみれたらどれだけ良いか…。結局、ボール周辺しか目に入っていないんですよね。」
子どもたちは、多くの場合「ボールとその周辺」に集中してプレーします。
逆サイドを視野に入れるには、以下の要素が必要です。
- プレーの余裕(判断のための時間)
- 首を振る習慣
- 空間認知能力(空いている場所を察知)
この“俯瞰力”は一朝一夕では身につきません。
しかし、トレーニングと声かけによって、確実に育てることができます。
改善策① 「逆サイドに出す成功体験」を小さく積む
いきなり試合で大きく展開させるのは難しいため、小さな成功体験を重ねるのが効果的です。
- 5対5のゲーム中に「サイドチェンジ成功で+1点」などのルールを導入
- コーチが「逆サイド空いてるぞ!」と声かけし、気づかせる
- ロングパスではなく斜め横のミドルパスから始める
「逆に出したらチャンスになった!」という体験が、“視野を広げる行動”を強化してくれます。
改善策② トレーニング中に「見える環境」をつくる
子どもたちが逆サイドを見られるようになるには、トレーニングの設計自体を変える必要もあります。
たとえば:
- サイド幅を広めに取った3対2や4対3のポゼッション
- 両サイドに“ボーナスエリア”を作り、そこを経由すると追加点
- 常に「首を振ってからパス」ルール
視野を広げることが目的化されていれば、逆サイドを見る意識は育ちます。
まとめ:「逆サイド展開」は“チームプレーと視野”の結晶
逆サイドを使えないのは、単に技術や判断が未熟だからではありません。
そこには「蹴れない」「信じられない」「見えてない」という複合的な理由があり、成長段階の自然な現象とも言えます。
しかし、だからこそ逆サイドへの展開ができるようになると、
その選手はチームにとってゲームを動かせる存在になります。
「逆、空いてるよ!」
その一言が届くようになる日を目指して、日々の練習にひと工夫を加えてみましょう。