少年サッカーの現場でよく耳にする悩みのひとつに、
「うちの子、前しか見てないんです…」という保護者や指導者の声があります。
ドリブルをしているとき、ボールを受けたとき、または守備のときも――
視野が狭く、周りが見えていない子どもは、どうしてもプレーが単調になり、ミスが増えてしまいがちです。
しかしこの“視野の広さ”は、教え方や習慣によって確実に伸ばすことができます。
今回は、「首振り」や「トラップの工夫」を通じて視野を広げるためのアプローチを紹介します。
視野が広い子どもにはどんな特徴がある?
ある保護者の方は、こう話してくれました。
「周りが見える子って、すごく重宝しますよね。パサーになる傾向があると思っています。首を振る癖がついているかどうかが大きいですね。顔を上げながらトラップできる子は、かなり見えてるなと感じます。」
この言葉の中には、視野の広さ=“周囲の情報を事前にインプットする力”であることがよく表れています。
実際、プロ選手たちが試合中に何度も首を振っている姿を見たことがある人も多いはず。
彼らはボールが来る前に、すでに「誰がどこにいるか」を把握しており、だからこそ一瞬の判断ができるのです。
子どもが「前しか見ない」3つの理由
まずは、なぜ視野が狭くなるのかを知ることが大切です。
① ボールを扱うのに精一杯
技術的にまだ不安があると、どうしても足元のボールばかりを見てしまいます。
② 周囲を見る「習慣」がついていない
首を振る、周りを確認するという行動は、自然にできるものではなく“教えて・意識させて・繰り返す”ことで初めて身につきます。
③ 「見たらどうするか」が分からない
周りを見ても、それを活かす判断力が未熟なため「見る意味がない」と無意識に感じている場合もあります。
改善のポイント①:首を振る習慣を“癖”にする
首を振ることを「技術」として習得させるには、まずトレーニングメニューの中に意識づけを入れることが有効です。
たとえば:
- パスを受ける前に左右を見るルールにする
→「パスする前に1回、もらう前に1回、顔を上げよう」と声かけ。 - コーンや色を使った周辺視野トレーニング
→ パスを受けながら、コーチが見せる色や数字を声に出して答えさせる。
など、「周りを見ないとできない課題」にすることで自然と癖がついていきます。
改善のポイント②:「顔を上げた状態」でのプレー練習
ボールコントロールに慣れてくると、徐々に顔を上げた状態でもプレーできるようになります。
おすすめなのは、トラップをした瞬間に顔を上げる癖づけです。
「止めたら顔を上げる」「ドリブル中でも、できるだけ前方を見る」よう促すことで、プレー全体の視野が広がります。
また、顔を上げてトラップできる=視野があるという評価を子どもに伝えることで、
その行動が“褒められるプレー”として定着しやすくなります。
改善のポイント③:成功体験を与える
子どもたちが「周りを見て良かった!」と感じる経験をすると、行動は定着します。
例えば:
- 「今のパス、ナイス視野!」
- 「相手の位置を見て動けたの、すごくよかったよ」
- 「見てたからいい判断できたね!」
など、視野を使ったプレーに対して“具体的に褒める”ことが非常に重要です。
まとめ:「見る力」は才能ではなく“習慣”で育てる
少年サッカーで「前しか見えない子」を責める必要はありません。
視野の広さは、技術や経験とともに少しずつ育っていく力です。
まずは首を振ること、顔を上げること、周りを確認することを楽しく・日常的に取り入れることから始めてみましょう。
そして何より、“見ようとした”ことを認めて褒める。
その積み重ねが、やがてピッチ全体を見渡せる“ゲームメイカー”を育てていきます。